間もなく6回目の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が実施されます。昨年12月に公表された志願者数は全体では昨年よりも増加していますが、内訳を見ると現役生が減少し、既卒者が増加しています。さらに既卒者の卒業年次別内訳を見ると、前年度卒業者が前年比104.3%、1,900人の増加に対して、前々年度卒業者(いわゆる2浪生)は145%、3,883人の増加となっています。大学全入時代にあえて再々チャレンジする受験生が目指すのは超難関国立大学だと考えられます。

共通テストの既卒者志願者の特徴的な動向
共通テストは2021年度入試から実施され、志願者数は毎年減少してきました。それが昨年2025年度には18歳人口の一時的な増加もあり、志願者数は増加に転じ、今年2026年度でも前年より増加しています。ただ、今年の場合、志願者の中でも現役生は昨年より5,000人以上減少していますので、全体数の増加は既卒者の増加による影響が大きいと言えます。
共通テストの志願者のうち、既卒者の状況をまとめた表が<表1>です。過去は減少が続いていましたが、今年2026年度は前年比109.8%、6,000人以上の増加です。さらにその卒業年次別内訳を見ると、前年度卒業者も増えていますが、前々年度卒業者(いわゆる2浪生)が増加しており、1万人を超えています。既卒者に占める構成比も上がるなど特徴的な動きを見せています。

既卒者の前年差、前年比を<表2>にまとめましたが、前年度卒業者が前年比104.3%、1,900人の増加に対して、前々年度卒業者は145%、3,883人の増加となっています。前々々年度以前卒業者(いわゆる多浪生、大卒再受験者も含まれています)は毎年だいたい1,3000人ぐらいで推移していますので、これらと比較しても明らかに異なる動きをしています。

なお、出身高校の所在地別の公表数字では、卒業年次別の内訳が分かりませんので、どの地域でこうした現象が顕著なのかは分かりません。そのため、既卒者全体で見るしかありませんが、出身高校の所在地で見ると、当然ながら人口が多い都道府県が人数順位で上位になります<表3>。また、前年からの増加数の順位を見ると、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏が上位となっています。大阪などは既卒者の人数は多いものの、増加数で見れば福岡、兵庫、愛知に及びませんので、志願者動向に特段の変化はなかったと見ることもできるでしょう。

【大学入試センター】(報道発表資料)令和8年度大学入学共通テストの志願者数等について.pdf
前々年度卒業者は新課程入試の前年入試の受験生
ここで前々年度卒業者が現役生の時に受験した入試を振り返ってみます。前年度卒業者は2025年度新課程入試の初年度を現役生として受験していますので、前々年度卒業者はその前年2024年度入試を現役生として受験していたことになります。新課程入試の前年の入試は、安全志向となって、受験生は志望をやや落としても手堅い受験プランで受けると言われています。学習指導要領が変わり、教育課程が変わると、教科の内容も変わる部分があります。既卒者に対する経過措置があるとは言え、自分たちが学んだものとは異なる教科書から出題されることはリスクの1つでもあるため、一般的にはリスク回避のため安全志向になると考えられています。では、実際はどうだったのかと言うと、新課程入試の共通テストで手厚い経過措置が用意されていたことなどもあり、当初予想されていたような極端な安全志向は見られませんでした。
難関国立大学では北海道大学、東京工業大学(現在の東京科学大学)、大阪大学の前期日程志願者数がやや減少しましたが、東北大学、東京大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、神戸大学、九州大学は前年より前期日程志願者数が増えました。共通テストの平均点が前年よりもアップしたことも影響していたと考えられます。その時の2024年度入試結果を扱った当コラムのタイトルは「新課程入試前年の2024年度入試、受験生は強気の出願傾向」でしたので、この時の現役生はおおむね当初の志望通りの出願をしたものと考えられます。受験生ひとり一人にそれぞれの事情や背景がありますので、1つのパターンでは語れませんが、今回の前々年度卒業者は、おそらく当時の入試結果によって再々チャレンジしている訳ではないように思われます。
では、2024年度入試の結果による再々受験ではないとしたら、どのようなことが考えられるのでしょうか。これも1つのパターンでは語れず、また想像でしかありませんが、昨年2025年度入試の結果が影響しているのはないかと思います。
【コラム】新課程入試前年の2024年度入試、受験生は強気の出願傾向(2024年3月19日)
超難関国立大学に再々チャレンジ?
2025年度新課程入試のトピックとしては、共通テストの平均点アップがあげられます。新課程入試の時には共通テストの平均点が大学入試センター試験時代も含め、前年よりアップすることが繰り返されてきましたが、やはりその通りになりました。それはそれで受験生にとっては良いことですが、共通テストの平均点が上がると、入試難易度も上がります。各大学の共通テストの予想ボーダーラインは、前年よりもアップした大学が多くなり、難関国立大学の予想ボーダーラインもより難しくなりました。
ただ、そうは言っても共通テストの平均点が上がれば、受験生は前向きに個別大学に出願することがこれまでのセオリーでした。しかし、2025年度入試ではとりわけ難関国立大学の志願者数は伸びませんでした。特に東京大学、東京科学大学、一橋大学の首都圏難関3国立大学は前期日程の志願者数が前年を下回るなど、意外な結果でした。予想ボーダーラインが上がって、東京大学の合格が難しいと考えた受験生が、東京科学大学、一橋大学に志望を変更することはこれまでもありました。ただ、その東京科学大学、一橋大学も志願者数が増えていないことから、難関国立大志望の受験生はどこに行ったのかと、一部の専門家の間では話題になったほどでした。その時の当コラムのタイトルは「難関大の2025年度入試動向 国私で傾向が異なる?」でした
この時、首都圏の国公立大学で志願者数が増えたのは、筑波大学、千葉大学、東京都立大学、横浜国立大学でした。これらの動きは共通テストの平均点アップ、予想ボーダーラインアップが、超難関大志望の受験生にとって逆風として影響したのではないかとみられています。特に既卒生として再チャレンジした受験生は失敗ができませんので、高くなった予想ボーダーラインを見て、首都圏難関3国立大学への出願を回避した可能性があると考えられます。
今回の共通テストでの前々年度卒業者増加にはこうした背景があるのではないかと思います。本当のところは現段階ではまだ分かりませんが、超難関の国立大学を本気で目指していた受験生が、目標に向かって再度チャレンジをしている可能性が高いのではないでしょうか。そして、これらの受験生はおそらく大学に籍があるものと思われます(いわゆる仮面浪人)。
2026年度入試は新課程2年目入試で、共通テストの平均点がダウンすることも予想されていますが間もなくその結果も出ます。それらも含めて注目するところが多い入試ですが、それにしても平均点のアップダウンは影響が大きすぎるのではないでしょうか。