今春2026年度入試結果は、国公立大も私立大も合格者数が減少したことで一般選抜は狭き門となりました。中でも都市部の私立大は志願者数の増加に加えて、一般選抜の合格者数を大きく減らしています。特に規模の大きな私立大でその動きが顕著です。受験生にとっては、模試の判定以上に厳しい結果となった大学もあったようです。

 

志願者数増加、合格者数減少で私立大の難化が顕著

 2026年度入試結果が判明するのにつれて、主要私立大学の難化傾向が明確に見えてきました。受験生にとっては厳しい結果となったようです。河合塾が提供する進路・大学入試情報サイトKei-Netでは、国公立大、私立大の入試結果の集計が随時更新されています。複数のクロス集計を見ることができますので、全体像を把握するのにとても役立ちます。また、各大学の入試結果も見ることができますので、個別大学の状況を知ることもできます。

 集計結果からは一般選抜の合格者数が国公立大、私立大ともに減少していますので、受験生にとっては厳しい結果となったことが分かります。特に私立大でその傾向が顕著に見られ、大学グループ別の集計を見ると最難関の早慶上理以外は全グループで合格者数が減少しています。志願者数は全グループで増加していますので、倍率も全グループでアップしています。倍率アップは難化を意味しますので、都市部の私立大にとっては、人口減少の影響を感じさせない状況になっています。

河合塾が提供する進路・大学入試情報サイトKei-Net
https://www.keinet.ne.jp/

大規模な私立大で合格者数がより減少

 大学グループ別の集計には志願者数に加えて、合格者数や倍率も集計されていますが、ここでは合格者数に注目します。一般選抜の合格者数を少しさかのぼって、経年推移をグラフにしました<グラフ1>。志願者数の推移のグラフはよく目にしますが、合格者数の推移はあまり見かけませんので、グラフ化して見るとMARCH、関関同立、日東駒専がこの3年間で一般選抜の合格者数が減り続けていることが分かります。特にMARCHと日東駒専のグラフの形状は非常に特徴的です。最近、高校からは都市部の私立大が入り難くなったという声を聞きますが、このグラフを見ればそれもよく理解できます。2018年度~2020年度に受験した受験生とそれ以降の受験生とでは、受かりやすさ、受かり難さの感覚が全く異なることでしょう。

 ただ、これだけ短期間で難易度の傾向が変わると、受験指導の現場としてはかなり悩ましいものがあります。端的に言えば、受験校を決める上で参考となる模擬試験の合格可能性判定に狂いが生じる可能性が高くなるのです。模試の合格可能性判定は、翌年度入試の各大学の合格者数の増減までは予想していませんので、A判定でも不合格になる受験生が出てしまうこともあります。受験指導の現場としては、手堅く併願校を選んだつもりでも、判定通りに合格できない受験生が想定以上に発生してしまうため、併願件数を増やして対応することになります。そうなると、ますます私立大の延べ志願者数が増えて、倍率が上がり・・・というスパイラルが見えてきます。

グループ内でも大学によって動きが異なる

 前述のようにMARCHと日東駒専はグループとしては非常に特徴的なグラフの形状をしていますが、大学別に見るとやや傾向が異なります<表1>。グループとしては、2023年度入試をピークにして、合格者数が減少に転じるのですが、大学によっては、グループ内の他大学で合格者数が減少していても、逆に増えている年度があったりするなどその動きは異なります。

 新しい学部学科が設置されたり、新しい入試方式を導入したりした場合、一般的には志願者数が増えることに連動して、合格者数も増えます。こうした新学部学科の設置等は各大学で年度が異なりますので、個別大学では別々の動きになります。こうした事情で合格者数が増減することは分かりますが、大学によっては変化が顕著な年度も見られます。例えば、東洋大の2025年度、2026年度は連続して減少幅が大きくなっています。専修大も同様の傾向が見られます。これらの大学は間違いなく入試難易度がアップして難化しています。高校から見ると、これまでだったら合格できていた生徒が受かっていないという状況です。受験生にとってさらに厳しいのは、2025年度の中央大と2026年度の法政大です。中央大は前年より約2,000人、法政大は前年より約5,000人の減少です。しかも、前の年度に合格者数が増えて、翌年に減少するのは、前年倍率を参考にしている多くの受験生にとってはかなりのダメージです。就活についても同様のことが言えますが、就職したり受験したりする年度によって、ここまで環境が変わってくるのは、運不運の問題なのかも知れませんが、何とかならないものかと思います。

受験生だけではなく他の私立大にも影響する

 大規模な私立大の合格者数の増減は、受験生だけではなく、他の私立大にとっても影響が小さくはありません。例えば、今春2026年度入試で法政大が合格者数を約5,000人減らしたということは、例年ある併願大と法政大の両方に合格した受験生で、例年なら法政大に流出・進学していた合格者が、今年は法政大に合格していませんので、そのまま併願大に残ることになります。つまり、併願大から見れば予想していたよりも多くの入学者となるわけです。それはそれで良いことですが、定員超過率には一定の基準(規制?)がありますので、入学者は多すぎても少なすぎても良くないのです。

 ただ、入学定員がなかなか充足しない主に小規模な私立大にとっては有難い結果を生む可能性もあります。日本私立学校振興・共済事業団(以下、事業団)が毎年、私立大の入試結果をまとめて公表していますが、その中の資料で私立大の規模別の入学定員充足率データがあります。入学定員通りの入学者だと入学定員充足率は100%となります。入学定員充足率が100%を下回ると、いわゆる「定員割れ大学」です。この定員割れがすぐさま経営の危機に直結するわけではありませんが、長期にわたればその私立大にとっては経営の危機と言えます。

 この事業団データの入学定員充足率を大学の規模別にグラフにしたのが<グラフ2>です。大規模私立大が合格者数を減らし始めた時期は、小規模私立大の充足率が改善し、大規模私立大が合格者数を増やし始めると小規模私立大の充足率が低下しているようにも見えます。そして、また大規模私立大が合格者数を減らし始めた時期が、18歳人口の一時的な増加時期とも重なって、小規模私立大も中規模私立大も充足率が改善しています。大学の目線で見れば「三方よし」のようなイメージかも知れませんが、不本意入学者が増えていると言えなくもありません。

【日本私立学校振興・共済事業団】私立大学・短期大学等入学志願動向
https://www.shigaku.go.jp/s_center_d_shigandoukou.htm

神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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