国立精神・神経医療研究センター、名古屋大学、大阪大学の研究グループは、自閉スペクトラム症(ASD)モデルのコモンマーモセットを用いた解析により、多動性が単なる「動いた量」だけでなく、動きの不規則性やストレス指標とも関連する可能性を示した。
自閉スペクトラム症では、落ち着きのなさ(多動)がしばしば認められる。しかし、その評価は保護者や教員による主観的な観察や評定に依存することが多く、客観的な評価手法の確立が課題とされてきた。また、多動は当事者にとって不安や緊張を和らげる自己調整手段として機能している可能性も指摘されている。このため、多動を「どれだけ動いたか」だけでなく、「いつ・どのように動いているか」という時間構造として捉え、ストレス指標ともあわせて評価することが重要と考えられる。
本研究では、ヒトに近い昼行性小型霊長類であるコモンマーモセットのASDモデルに首輪型の超小型活動量計を装着し、日常的な活動パターンを解析した。その結果、ASDモデルと通常個体で1日の総活動量に大きな差はなかった一方、ASDモデルでは朝と夕方に活動が高まる特定の時間帯(午前8〜10時および午後7〜8時)が存在し、休息が途切れやすく、動きの予測しにくさの指標であるサンプルエントロピーが大きいことが明らかとなった。さらに、ストレス関連ホルモンであるコルチゾール値の高さが、平均活動量や不規則性、休息時間の短さと相関する傾向も認められ、多動性がストレス反応と関連して生じている可能性が示唆された。
また、ヒトでASDが最も多く診断される2~3歳に相当する3ヶ月齢のマーモセットASDモデルでは、“見知らぬ相手”がいる場面で多動傾向が強まり、社会的関心(他者に近づく傾向)が低下することも確認された。この結果から、ASDの特性は年齢や場面で表れ方が変化する可能性があるとしている。
本研究は、「多動がある/ない」という単純な二分を超え、活動の時間的特徴や状況依存性に着目した新たな多動性の捉え方を提示した。将来的には、スマートウォッチなどのウェアラブル機器を用いた多動性の客観的評価を通じて、ASDに対する個別支援や介入効果の検証への応用が期待される。

