東京科学大学、東京大学、名古屋大学、東北大学、群馬大学、北海道大学、国立長寿医療研究センターの研究グループは、がん細胞由来の細胞外小胞が尿中へと排出される仕組みを明らかにした。
すべての細胞は、その活動に伴いさまざまな情報を搭載する細胞外小胞を放出している。尿や血液などの体液には多くの細胞外小胞が含まれており、これらを解析する「リキッドバイオプシー」は、組織を採取する「バイオプシー」と比べて低侵襲に疾患を診断できる手法として期待されている。
がんにおいても、細胞外小胞は腫瘍の状態や性質を反映するバイオマーカーになりうると注目されてきた。しかし、特に非侵襲的な体液である尿中に、腫瘍組織から分泌された細胞外小胞が実際に排出されているのか、またその排出機構については明らかになっていなかった。
本研究では、あらかじめタグ付けされた細胞外小胞を放出するがん細胞を構築し、これをマウス脳に移植して細胞外小胞の動態を追跡した。その結果、脳腫瘍から分泌された細胞外小胞が血中を移行し、腎臓を経て尿へと排出されることが確認された。
一般に、腎臓の糸球体は、内皮細胞・基底膜・ポドサイト(上皮細胞)からなる三層構造により、一定以上のサイズを有する分子の通過を制限するフィルターとして機能している。今回、がん由来の細胞外小胞は比較的大きなサイズであるにも関わらず、トランスサイトーシスと呼ばれる現象を介して糸球体の細胞層を通過できることも明らかとなった。
さらに、脳以外の腫瘍についても検討したところ、肺がんや膵がんなどにおいても、がん細胞由来の細胞外小胞が尿中に排出されることが確認された。また、尿中に存在するがん由来細胞外小胞の量は、血中よりもむしろ多いことも示された。
本研究により、尿中の細胞外小胞が信頼性の高いバイオマーカーとしてがん診断に応用できる可能性が示唆された。血液採取よりも低侵襲かつ簡便な尿採取を用いたリキッドバイオプシーの診断技術開発が、今後さらに進展することが期待される。




