畿央大学大学院の三枝 信吾氏(博士後期課程)と森岡 周教授らの研究グループは、入院中の脳卒中者を調査し、歩行は発症前の生活の再構築や健康の維持、人間関係や社会環境への再適応と深く関わる行為であり、他者からの視線など周囲との関係性(心理社会的側面)からも重要であることを初めて明らかにした。
脳卒中を発症すると、多くの人が歩行能力の低下を経験し、日常生活や社会参加にさまざまな影響を受ける。しかし、どのような理由で入院中の脳卒中者が歩行を重要と捉えているのかについては、明らかにされていなかった。
研究グループは今回、回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中者19名を対象に、歩行の重要性に関する対面でのインタビューを行い、質的分析を行った。
その結果、歩行は発症前の生活の再開に不可欠な要素であり、健康の維持および機能低下の予防に重要と捉えていた。一方、歩行時に生じる身体的・環境的な困難について語っており、また、歩行の困難さが家族や周囲の人々との関係性に影響を及ぼすことを懸念していることや、他者からの視線を通じて脳卒中者として捉えられることを避けたいという思いも示された。さらに,歩行の重要性は経済的負担や交通手段、外部支援の必要性など、広範な社会的課題にまで及んでいた。
今回の研究は、理学療法士等が歩行リハビリテーションを行う際に、脳卒中者自身が歩行に見出している意味や価値に着目する必要性を示している。研究グループは、今後の歩行リハビリテーションでは、身体機能や移動能力といった視点に加え、個々人が認識する歩行観を踏まえた包括的な支援が必要だとしている。
