新潟医療福祉大学医療技術学部救急救命学科の大松健太郎准教授、金沢医科大学医学部救急医学講座の牛本知孝講師および稲葉英夫客員教授の共同研究グループは、「国外からの来訪者(訪日外国人)」が院外心停止した際、「国内からの来訪者(国内来訪者)」と比べて、バイスタンダー(一般市民)による心肺蘇生の実施率と1か月後の社会復帰率が低いことを明らかにした。
日本を訪れる外国人旅行者やビジネス渡航者は年々増加している。一方で、こうした訪日外国人が院外心停止を起こした場合の救命率が国内来訪者と異なるかどうかについては、これまで十分に検討されていなかった。
そこで本研究グループは、2018~2023年の総務省消防庁のデータを用い、日本全国で救急搬送された約5万7千件を対象に解析を実施。訪日外国人と国内来訪者の心停止の特徴、バイスタンダーによる心肺蘇生の実施状況、1か月後の社会復帰率を比較した。
その結果、バイスタンダーによる心肺蘇生の実施率は国内来訪者で58.0%だったのに対し、訪日外国人では30.8%にとどまった。また、訪日外国人では心停止の目撃率も低く、「通りすがりの見知らぬ人に目撃されるケース」が多い傾向がみられた。これらは、言語や文化、状況的な障壁がバイスタンダーの行動に影響している可能性を示唆している。
1か月後の社会復帰率は、訪日外国人8.2%、国内来訪者14.4%で、目撃者あり心停止例に限定した傾向スコアマッチング後も、訪日外国人のほうが有意に転帰不良だった。COVID-19流行期(2020~2021年)にみられたバイスタンダーによる救命処置実施率の低下幅も、国内来訪者に比べて訪日外国人でより大きかったという。
以上の結果から、言語や文化の違い、周囲の人との関係性の希薄さなどがバイスタンダーによる救命処置の実施に影響し、訪日外国人の救命率低下につながっている可能性が示された。
研究グループは、多言語での救急対応情報の整備や、観光地・公共空間における心肺蘇生およびAED教育の強化などを通じ、誰もが適切な救命処置を受けられる環境づくりの必要性を指摘している。
