東京大学の研究グループは、慢性疼痛と注意欠如・多動症(ADHD)症状との関連を明らかにした。
慢性疼痛では、けがや病気の治癒後も原因が不明確な痛みが持続することがあり、身体的要因だけでなく、不安やうつなど心理的・社会的要因との関係が指摘されている。
一方、ADHDはドパミンやノルアドレナリンといった脳内物質の働きと関わり、痛みに敏感になりやすい可能性が指摘されている。また、自閉スペクトラム症(ASD)でも感覚過敏を伴うことが多いため、これらの発達障害の特性と痛みとの関連が注目されている。
そこで本研究では、慢性的な痛みを専門に診療する全国の「痛みセンター」を受診した慢性疼痛患者958名の臨床データを用い、ADHD・ASD症状と痛みの強さ、および不安・うつ、不眠、痛みの破局化(「この痛みはもう絶対によくならない」「痛みのせいで生活が完全に壊れてしまう」といった痛みを過度に悲観的に捉える傾向)などの関連症状との関係を解析した。
その結果、対象患者の17.1%にADHD症状、4.4%にASD症状が認められた。さらに、痛みが強いほどADHDの陽性率が有意に高い傾向がみられた。一方、ASDと痛みの強さとの間に明確な関連は認められなかった。
また、パス解析により、ADHD症状は不安・うつや痛みの破局化を介して、慢性疼痛の重症化につながる経路が存在し得る(影響し得る)可能性が示された。
本研究により、ADHD症状を改善することで、間接的に不安・うつや痛みの破局化を改善し、結果として慢性疼痛を軽減できる可能性が示された。この成果は、慢性疼痛の診療においてADHD症状の評価と対応が極めて重要である可能性を示すものであり、今後の治療戦略や医療政策の検討に寄与することが期待される。
