国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は、北海道大学、東北大学及び中国新疆農業科学院と共同で大豆品種FT-Abyaraから塩類濃度を調節する遺伝子(耐塩性遺伝子;Nc1遺伝子)を発見し、その効果を明らかにしました。

 大豆は、世界で重要なマメ科の作物にもかかわらず、イネ科作物と比べると塩害などの環境ストレスに弱いことが分かっています。乾燥地域や半乾燥地域で塩害がよくみられ、世界の、人工的に水を供給した耕地(灌漑耕地)の約1/3の面積が塩害の影響を受けています。また、日本でも津波や高潮による海水流入が原因の塩害が存在します。このため、塩害被害に強い大豆の改良が期待されていました。

 研究グループは、耐塩性にかかわる遺伝子を詳細に解析し、耐塩性遺伝子の位置を特定しました。また、この遺伝子(Nc1遺伝子)が根で強く発現すると、耐塩性が向上することを明らかにしました。
さらに、Nc1遺伝子のDNA情報に基づいて耐塩性の指標となるDNAマーカーを開発しました。
選抜した耐塩性遺伝子(Nc1遺伝子)を持つ大豆と塩ストレスに弱い対照品種(塩感受性品種)を東北大学院生命科学研究科付属の宮城県内の塩害畑で3年間にわたって評価を行いました。結果として、すべての塩感受性系統は葉の黄化や枯死などの激しい塩害症状を示しましたが、耐塩性系統では塩害が観察されず、耐塩性遺伝子の効果を塩害畑において耐塩性遺伝子の効果を確認することができました。

 今回の研究で解明されたNc1遺伝子は既存の大豆品種に導入することが可能であり、塩に強い大豆の育成が可能です。そのため、世界規模での大豆の食料の安全保障に役立てることができると期待されています。

東北大学

イノベーションの源泉となる優れた研究成果を創出し、次世代を担う有為な人材を育成

東北大学は、開学以来の「研究第一主義」の伝統、「門戸開放」の理念及び「実学尊重」の精神を基に、豊かな教養と人間性を持ち、人間・社会や自然の事象に対して「科学する心」を持って知的探究を行うような行動力のある人材、国際的視野に立ち多様な分野で専門性を発揮して指導的[…]

北海道大学

産業界や地域との連携を強固に「北海道大学ならではの実学」が世界をリード

北海道大学の起源は、1876年に設立された札幌農学校に遡る。長い歴史の中で、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」及び「実学の重視」という基本理念を掲げ、培ってきました。 この理念の下に国際的に通用する高度な学問的素養をもち、的確な判断力とリーダ[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。