ロボティクス専攻からロボット・スマート機械専攻へ

 Society 5.0に対応していくため、これまで機械工学科に設置されていた「ロボティクス専攻」を、「ロボット・スマート機械専攻」へ改組し、その教育・研究内容をグレードアップさせていくことも、新たな教育の取り組みのひとつだ。カリキュラムの特色としては、近未来の社会において要請されるロボット技術について、基礎から応用へ、段階的に学びを深めていくことに加え、ICT環境を導入することにより、次世代産業システムへの理解を支援。これらの学びを通して、IoTを利用してAIを活用できるロボットや次世代産業システム、次世代モビリティシステムを創造していく、時代のニーズに対応したエンジニアやクリエイターを育成していく。

 さらに埼玉工業大学では、AI時代に注目の高まる自動運転技術に関する研究・開発にも、積極的に取り組んでいる。そのはじまりは、2016年に学内で発足した次世代自動車プロジェクトチームで、2017年10月には内閣府が創設したSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の自動走行システム/大規模実証実験へ、私立大学として唯一参加。同年12月より地元深谷市で、公道での実証実験を開始している。2018年6月には、大学発の自動運転のベンチャーとして私立大学初となる「株式会社フィールドオート」を、株式会社ティアフォーからの出資により設立。以降、ティアフォー社が普及を推進するオープンソースの自動運転OS「Autoware(オートウェア)」(The Autoware Foundation の商標)を搭載した自動運転車を、東京の青梅街道など、全国各地の公道で開催される各種の実証実験に参加して、実績を重ねてきた。

 自動運転技術に関する最新のトピックスとしては、2019年4月1日、私立大学初となる自動運転技術の全学的な研究組織、「自動運転技術開発センター」を設立。本センターでは、自動運転機能を持つ福祉車両の開発、AI技術を活用した自動運転技術の研究、自動運転を題材にした実践的なAI教育などの課題に取り組む予定で、自動運転バスの開発にも着手している。自動運転は社会的なニーズが高く、実用化への期待が高い技術分野とされているが、埼玉工業大学では、第5世代移動通信システム(5G)によるレベル4(5段階中)の公道実証実験にも参加した経験をもとに、実用化を目指した開発をより積極的に展開している。

 また、2019年7月1日にはAI専攻の新設とロボット・スマート機械専攻への改組を記念し、人工知能キックオフシンポジウムを実施。当日は、基調講演に、最新のテクノロジーやIT業界のトレンドを、一般ユーザーに向けてわかりやすく解説・啓蒙する富士通株式会社の理事「首席エバンジェリスト」としても活躍する、中山五輪男氏を迎え、基調講演が行われた。この講演で中山氏は、埼玉工業大学が取り組むAI教育とともに、自動運転技術の研究について「非常にレベルが高い」と大きく評価。未来には、今では想像もつかない新しい技術がどんどん生まれてくるとしたうえで、「そうした新しいものを生み出していくのは若者たち。学生のみなさんには、新たなカリキュラムで得た学びをもとに、さまざまなアイデアを創出していただき、新たな技術で世界をリードしていってもらいたいです」と、今後の埼玉工業大学の活動に対して期待を込めたメッセージを送り、基調講演は大盛況のうちに終了した。

 

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埼玉工業大学

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