2026年度国公立大学の志願状況は、大学入学共通テストでいくつかの科目が難化して平均点がダウンした影響が読み取れます。全体集計では志願者数が前年比98%と前年並みですが、個々の大学では大幅な志願者増加や大幅な志願者減少など、受験生の極端な動きも見られました。駿台予備学校と河合塾の情報サイトから、今年の国公立大学入試の状況を概観します。

国公立大学の一般選抜志願状況はほぼ昨年並み
国公立大学の志願状況を集計した各社のサイトでは、駿台予備学校が詳しい分析を行っていますので、ここではそれを参考に全体動向を概観します。また、個別大学の志願者数は河合塾のサイトで見ることができ、河合塾のサイトでは各学部学科などの募集区分ごとの志願状況が昨年分も含めて表になっていますので、志願動向がよく分かります。
国公立大学の入試を見る上で、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の平均点は欠かせない要素です。2026年度共通テストは、英語リスニング、数学Ⅰ・数学A、国語、物理、情報Ⅰなどで昨年より平均点がダウンしました。国語、物理、情報Ⅰは10点以上のダウンとなっており、今回の共通テストは理系生にとってダメージがより大きい結果になったと言えます。実際に河合塾・駿台・ベネッセ3社の推定による総合型の平均点(1000点満点)は、6教科文系型の平均点(昨年620点→今年596点、-24点)よりも、6教科理系型の平均点(昨年633点→今年603点、-30点)の方がダウン幅は大きくなっています。受験生の立場で見れば、目標としていた得点よりも点数が20点~30点低いというのは、気持ちの上でのダメージがかなり大きかったと言えるでしょう。
さて、駿台予備学校の集計では、国公立大学の志願者数は全体では前年比98%と昨年並みとなっています。志願者の実人数に近い前期日程は約23万5千人で前年比100%です(前期日程は国立大学で微増、公立大学で微減)。昨年、志願者数が大きく増加した公立大学の中期日程は前年比95%と減少しました。これは昨年の高倍率が敬遠された結果だと考えられます。年々実施する大学・学部数が減っている後期日程は国公立大学合計で前年比96%と減少しています。
「外国語」「芸術」系統が増加、医療系の人気は下降気味
学部系統別の集計を見ると、「外国語」、「芸術」、「その他」の増加が目立ちます。これには東京外国語大学(言語文化学部)、東京芸術大学の増加が影響しています。芸術系は私立大の志願者数でも増加しており、一昨年ごろから一定の人気があります。なお、「その他」には一括入試や総合入試が分類されていますので、金沢大学(理系一括入試)、北海道大学(総合入試文系・理系)の志願者数増加が影響しています。
私立大入試の場合は、新設学部で志願者数を多く集めるケースや入試方式を増やして延べ志願者数を増やしているケースの影響もあるため、学部系統の人気で志願者数が増えているとは言い切れないところがあります。ただ、国公立大の場合は、各日程での出願は1つですので、ある程度、受験生から人気のある学部系統か、逆に不人気の学部系統なのかが志願状況から見えると考えて良いでしょう。
この点では、国公立大だけでなく、私立大の入試でも共通しているのは、「医」や看護などの「保健衛生」分野の人気が下降していることです。コロナ禍では医療系人気が高まりましたが、それが落ち着いてきたようです。報道等によれば、医療現場では人材不足が続いていますが、受験生の志向が社会的ニーズとは必ずしも一致しないひとつの例と言えるでしょう。
合格目標ライン65%未満のグループのみ志願者数が増
駿台予備学校の集計では、「共通テスト目標ライン別集計」があり、合格目標ライン(合格可能性60%)で各大学をグループ分けして、そのグループ別に志願者数の前年比を集計したデータがあります。これは、分かりやすく言えば、入試難易度のレベル別集計ですが、ここに今年の入試の特徴がよく表れています。前期・後期日程は合格目標ライン65%未満のグループのみ志願者数が増えており、それ以外のグループは全て前年より減少しています。得点率65%は総合型の平均点よりもやや高い得点率ですので、多くの受験生は、難関大にチャレンジするよりは、与し易い大学を選んで、慎重に出願しているようです。
東京大学、東京科学大学は今年度入試で一部の募集区分が第1段階選抜の倍率を変更して基準を上げていますので、志願者数の減少は共通テストの平均点ダウンの影響がそのまま表れたものとみられます。昨年も東京大学、東京科学大学、一橋大学で志願者数が減少していましたので、今年度入試に限らず、ここのところ難関大を目指す受験生が徐々に限られてきているような傾向が見えます。
志願者数が前年から倍増・半減の極端なケースも
河合塾のサイトで各大学の志願状況を見ていくと、前年比で極端な変動が見られる大学・学部があります。大学の担当者にとっては悩ましい課題だと思います。
前期日程でいくつか例をあげると(カッコ内は学部名、数字は全て志願者数前年比)、福井大(医)209%、徳島大(歯)198%、大分大(教育)278%、福島県立医科大(医)218%、長野県看護大(看護265%)、新見公立大(健康科)189%、高知工科大(理工学群)182%など大幅に志願者数が増加した大学が見られます。学科や専攻など募集人員や志願者数が少ない場合には数人が動いただけで、前年比200%~300%になることはありますが、学部単位で前年の2倍になるというのは大学入試ではなかなかないことです。
逆に志願者数が減少したケースは、富山大(医)44%、宮崎大(医)41%、敦賀市立看護大(看護)52%、山梨県立大(看護)40%、名古屋市立大(データサイエンス)50%、三重県立看護大(看護)55%、福知山公立大(地域経営)51%、公立鳥取環境大(経営)39%、島根県立大(地域政策)22%、山口県立大(社会福祉)45%、(看護栄養)53%、山陽小野田市立山口東京理科大(薬)36%、高知県立大(看護)55%など、ほぼ半減あるいはそれ以上の減少が見られたケースもあります。
志願者数が増減したこれらの中には、学部学科を改組して、学科などの募集区分が増減したり、入試方式を変更したことで入試区分が増減したりしたケースもありますので、人気や不人気と言った要素で志願者数が増減したとは言い切れません。ただ、理由を強いてあげれば、多くのケースでは、前年の低倍率や高倍率を見て、受験生が慎重に出願した結果だと言えると思います。
前述の難関国立大への出願を避けるケースも含め、リスクを避ける傾向が年々強くなっているような印象があります。こうした判断が、情報過多によるものなのか、あるいはコーホートの特徴なのかは分かりませんが、従来とは少し異なる動向ではあります。

来年は東京大が新学部を設置、年内入試で新たな規制も
来年の2027年度入試についての話題は、何と言っても東京大学が9月に新しく設置予定の新学部「UTokyo College of Design」です(2027年9月入学)。すでに入試方法なども公開されており、学士・修士一貫の5年制の教育課程であることなど、学修内容に関する情報も多く発信されています。さらに、奇しくも時を同じくして、東北大学にも新しい教育プログラム「ゲートウェイカレッジ」が4月に設置されます。両大学の新学部・プログラムは、どちらも既存の学部とは異なる特色ある教育課程が計画されています。果たして今の国内の高校生に受け入れられるのか、要注目です。
また、ここ数年、一種の社会現象とも言える盛り上がりを見せる、私立大の学力型年内入試ですが(盛り上がっているのは首都圏だけ?)、新たな規制として年内入試で面接が必須化されることになると報道されています。昨年、年内入試で学力試験以外に、面接や小論文など他の評価基準を組み合わせることを必須としたのですが、配点を低くしたり、配点しなかったりするなどの対応をした私立大があり、新ルールは実質的には骨抜きとなってしまいました。新規制は、それらに対する対抗措置とも言えそうですが、一部の報道によるとオンライン面接は可とされているようです。このあたりが、行政と民間の知恵比べのポイントになりそうです。
<参考>
【駿台予備学校 大学入試情報】「2026年度 国公立大入試状況分析」
https://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/news/index.html
【河合塾Kei-net】2026年度 国公立大出願状況
https://www.keinet.ne.jp/exam/entry/index.html
【東京大学】UTokyo College of Design
https://design.adm.u-tokyo.ac.jp/jp/
【東北大学】ゲートウェイカレッジ
https://tu-gwc.tohoku.ac.jp/