横浜市立大学大学院の金子惇准教授らの研究グループは、「へき地」尺度(RIJ)を用いて、全国の市区町村に対する包括的解析により、「へき地度」※が高い地域では、脳卒中と男性自殺の標準化死亡比が有意に高い傾向にあることを明らかにした。
日本では都市部と「へき地」(医療資源の乏しい郡部)で医療アクセスや健康アウトカムに格差が存在することが指摘されてきたが、これまで「へき地」を段階的に定量化する指標が乏しく、疾患横断的な検証は限定的だった。
研究グループは、全国1897市区町村(人口約1.26億人)を対象に、公開統計データによるエコロジカル研究を実施。地域の「へき地度」は、日本で開発・検証された「へき地」尺度(RIJ)で評価し、急性心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞・脳出血)、がん、自殺の標準化死亡比(SMR)および糖尿病外来医療の標準化レセプト出現比(SCR)との関連を検討した。
その結果、「へき地」における疾患別の健康格差が一様ではないことを示した。特に、緊急性の高い疾患(心筋梗塞・脳卒中)や男性の自殺では、「へき地度」が死亡と関連し、脳卒中と男性の自殺では「へき地度」が高くなるほど標準化死亡比(基準集団との比)が高くなる用量反応関係を認めた。これにより、救急医療体制や地域精神保健対策の重点的強化の必要性が示唆される。一方、がんでは「へき地度」との関連が乏しく、疾患特性に応じた政策立案の重要性が示された。
今回の研究で、「へき地度」と高齢化率・社会経済的な困窮との強い相関が示された。今後、RIJの活用により、医師偏在対策、救急医療体制整備、地域精神保健施策など、科学的根拠に基づく地域医療政策への応用が期待されるとしている。
※「へき地」という言葉は医療資源の乏しい郡部を指す言葉として行政文書でも用いられており、英語のruralに対応する言葉として本研究では「へき地」「へき地度」という言葉を用いている。ただ、「へき地」も”rural”もネガティブなニュアンスを含んで用いられる場合もあるものの、他に適切な用語が無いため使用されているという側面もあり、その点を鑑みて、本プレスリリースでは「」付きの「へき地」「へき地度」という表現を用いている。
