東京経済大学では2026年度より、経営学部経営学科現代経営コース生(2025年度以降入学者)を対象に「アントレプレナーシップ養成プログラム」をスタートする。プログラムを担当するのは、起業支援のプロであり、自らも起業経験を持つ馬込正特命講師。プログラムの目的や特長、そしてアントレプレナーシップ教育にかける想いを、馬込先生に伺った。
起業経験者の教員が、学生の背中を押す
東京経済大学の建学理念である「進一層(Forward Forever)」。同大学の創立者であり、明治から大正期にかけて実業家として多くの企業を立ち上げた大倉喜八郎氏が、若者たちに求めた気概だ。大倉氏は日本初の海外支店を設立するなど、世界でビジネスを展開。グローバルに活躍できる人材の育成を目的として、同大学の前身である大倉商業学校を開校した。こうした大倉氏のチャレンジ精神を受け継ぐ学生を一人でも多く輩出したいという想いから、創立125周年を迎え、新たに「アントレプレナーシップ養成プログラム」を開設する。
また、同大学では過去にも中小企業基盤整備機構の協力を得て「起業」に関する特別講義を開講したことがあり、起業を検討している学生が想定以上にいたことも、プログラム開設の理由の1つである。
プログラムを担当するのは、多くの起業家を支えてきた馬込正特命講師。自身も起業経験者で、経営コンサルタントとしての実務に加えて、起業支援にも力を注いできた。東京経済大学をはじめとする複数の大学での教育経験も持つ。そんな馬込先生のモットーは「10年先の“真の笑顔”を実現すること」だ。

「夢を持って起業しても、2~3年で終わってしまっては意味がありません。残念ながら、すべての起業家が成功するわけではなく、多くの人が途中で挫折してしまいます。現実は決して甘くありません。だからこそ、10年先を見据えた支援を大切にしています。起業家が苦楽を乗り越えながら10年間ビジネスを続け、 “起業して本当によかった”と心から笑顔になれるように、そのためのアントレプレナーシップ教育と起業支援に、全力で取り組んでいます。」
アントレプレナーシップは日本語で「起業家精神」と訳されているため、起業を志す学生だけを対象にしているように思われがちだ。しかし東京経済大学の考えるアントレプレナーシップは、どのような学生にも必要な力だ。
「本学ではアントレプレナーシップを『社会や企業、地域の課題に向き合い、自ら考え、行動し、仲間と協働して価値を生み出す力』と位置づけています。起業だけでなく、家業の継承、企業内新規事業の創出など、さまざまなキャリアで活かせるでしょう。
また、本プログラムを受講することで3つの力が育まれる、と学生たちに伝えています。ひとつは行動力。何かをやってみたいと思ったとき、自ら動き出す力です。2つ目は共創力。仲間と力を合わせ、価値を形にする力です。そして3つ目は持続力。困難にもくじけず、挑戦を続ける力です。」
知識から実践まで、包括的に学ぶプログラム
アントレプレナーシップ養成プログラムは、馬込先生が積み重ねてきた経験や、起業支援のノウハウを総動員して創り上げた。知識を得るための授業、挑戦のための特別ゼミ、そして馬込先生による個別支援が、プログラムの中核を担う。さらに、本プログラム修了生も含め、学生が自由に集いビジネスやプロジェクトを検討・推進する場として「E-Lab(Entrepreneurship Laboratory)」を設けることで、大学全体でアントレプレナーシップの機運を高めることを目指している。経営学部経営学科現代経営コースの学生のうち、所定の選考を通過した約20名が、2年生から4年生までの3年間をかけて実践的に学ぶ予定だ。
「ただ知識を学んで終わらせる教育にはしません。実際に行動して成果を生み出すまでを包括的に支援します。学生相手だからといって手を抜くことはありません。教える内容は、私が普段社会人を相手に行っている起業支援と同じです。社会に通用するビジネスを実現するために、アイデア形成から事業化、必要に応じて法人登記、その後の継続的な運営まで、一連のプロセスを伴走していきます。」
授業のなかには、プログラム生限定で受講できるものがある。たとえば従来型のビジネスに参入する形で起業をする「スモールビジネス」について学ぶ授業、世の中にまだ存在しない価値を生み出し、新しい市場を切り拓く「スタートアップ」を扱う授業などだ。また、起業家や経営者などを招いて講演や学生と対話する「アントレプレナー&リーダーズセミナー」という科目も用意した。
「起業の勉強は、起業家に会うのが一番です。彼らは自分のやりたいことを叶え、人や社会と対峙し、ビジネスを背負っています。だからこそ普段から見えているものが違う。幅広い分野や領域の方と学生が接し、お互いの刺激になればと思っています。」
特別ゼミではグループや全体で行う活動のほか、個人が目標を定めて挑戦する機会も設けた。各活動の企画や運営はどれも学生主体で行い、教員は目標の実現に寄り添っていく。
「学生のやりたいことを叶える場として、特別ゼミを位置づけています。さらに個別支援で私がひとりひとりの挑戦に寄り添い、段階に応じて柔軟にサポートする予定です。私自身が現役の経営者であり、起業支援の最前線で活動する実務家だからこそ、伝えられることがあると思っています。今までの私の経験はすべて、本プログラムのためだったと言い切れるほど強い想いを抱いて準備をしてきました。学生たちには経験と知識のすべてを捧げたいです。」

アントレプレナーシップ教育で日本の未来を明るくする
そもそもアントレプレナーシップはなぜ必要なのだろうか。馬込先生は、次のように考えている。
「アントレプレナーシップは、ただ社会で生きるうえでは必須ではないかもしれません。しかし自分の想いを形にし、社会に出てよかったと実感できる人生を送るためには、アントレプレナーシップが必要不可欠だと考えています。ビジネスに挑戦したい、自分を変えたい、成長したい、チームで学び社会とつながりたい。アントレプレナーシップは、そんな想いを持つ方の背中を押す力になります。」
だからこそアントレプレナーシップ養成プログラムがめざすのは、起業家の輩出だけではない。これから社会に出て行く学生の後押しをするのが目的だ。
「若者が自らの可能性に挑戦し、社会に踏み出す第一歩を支援したいです。そのために重要なのは、挑戦と失敗を肯定する文化。ビジネスが成功するためには、失敗が欠かせません。また、失敗も含めて挑戦を楽しむことこそ、未来を創る原動力になります。本プログラムを通して、地域と社会に新しい価値を生み出す実践的リーダーを育成したいです。」
起業家の育成に対しても、馬込先生は熱意を持っている。起業家が増えれば日本の未来が元気になると考えているからだ。
「今の日本は、起業に踏み出す人が少なく、経済全体の活力も十分ではありません。だからこそ、新しい挑戦が次々と生まれ、起業への意欲が高まっていくような正の循環を作っていかなければいけません。また、日本の基幹産業が海外企業との厳しい競争にさらされている時代だからこそ、一点突破でイノベーションを起こせる起業家の存在は、以前にも増して重要になっています。元気な起業家を増やしていくためにも、アントレプレナーシップ教育は欠かせない取り組みだと考えています。これまでも私は『地球を救う起業家を育てる』ことを使命として、本気で取り組んできました。私が支援した起業家たちが、志正しくビジネスを立ち上げ、成功をつかむことができれば、きっと世の中はより良い方向へ進んでいく、私はそう信じています。」
学生や日本の社会を切り拓く可能性に満ちあふれたアントレプレナーシップ養成プログラム。最後に馬込先生は、本プログラムを勧めたい学生像を語った。
「『挑戦したい』『一歩踏み出したい』と、うずうずしている学生には、ぜひ来てほしいですね。目をキラキラ輝かせて前に進むためのお手伝いができたら、これほど嬉しいことはありません。」

東京経済大学 経営学部 特命講師
馬込 正(まごめ ただし)
1988年 日本大学を卒業、大手電機メーカーを経て、2002年に経営コンサルティング事業を行う株式会社ハーモニーリンクを設立し、代表取締役に就任。2011年に中小企業診断士として登録。
2025年4月より東京経済大学 経営学部 特命講師に就任。
