昭和女子大学に新設された総合情報学部は、2026年4月に待望の一期生を迎えた。同学部ではデータサイエンスやデジタル技術の知識だけでなく、それらを社会に実装する教育を行う。実際の授業の様子や、学生たちの雰囲気はどうだろうか。スタートしたばかりの総合情報学部や、これからの期待について、学部長である山中健太郎教授に伺った。
総合情報学部の学生が学ぶ10号館1階にある1Sホール
ビジネスにおける現場と技術者の架け橋に
総合情報学部は、データサイエンス学科とデジタルイノベーション学科の2学科を配置。情報を適切に分析し、効果を予測する力を育む。それに加えて、社会でさまざまな人と協働する上で欠かせないソフトスキルやビジネス・健康・心理3領域の「ドメイン知識」を段階的に身につけていく。スキルや専門的な知識を掛け合わせながら実践力を高めることが目的だ。
「データサイエンス学科は、数学と統計学で分析して終わりではありません。分析結果をどの分野で活用し、どういう形で社会に実装していくかという全体像を含めて『データサイエンス』です。本学ではデータサイエンスや活用先の分野を学ぶだけでなく、論理的思考力やチームのマネジメントスキルなど、社会で必要とされる人的スキル(ソフトスキル)も教えていきます。デジタルイノベーション学科も同様です」
ソフトスキルやドメイン知識の必要性は、現場の声を聞くことで見えてきたという。企業ではビジネスとデータサイエンスの専門人材がそれぞれいたとしても、現場のニーズを正しく理解し、適切にシステム要件に落とし込める人材が圧倒的に不足しているという課題があった。
「お互いの言っていることが難しくて理解できなかったり、意図がうまく伝わらなかったりといった場面は多いと思います。本学部ではデータサイエンスやデジタル技術に加えてドメイン知識をどちらの学科でも学び、異なる分野をつなぐ架け橋となる人材を輩出しようと、カリキュラムを設計しました」

一期生の様子から見えたカリキュラムの長所
2026年4月に一期生が入学し、いよいよ授業がスタートした。1年次の必修科目は数学やコンピュータ、プログラミングなどの基礎が中心だ。並行してソフトスキルを養うためのグループワーク科目も履修する。
「一期生を迎えるまではどういう学生が来てくれるのか予想がつきませんでした。実際は他学部の学生と同様に、大学で学ぶことに意義を感じている学生たちが集まってくれたと思います。みなさんモチベーションも高いですし、楽しそうに通ってくれて嬉しいです」
入試の際は、数学は選択科目にとどめた。それは、例えば大学入試のための数学では計算問題を一カ所も間違えずに机上で正解を導き出す、というタイプの数学力が必要だ。しかし、現代の実社会では問題の内容や解き方さえ理解しておけば、コンピュータを活用して計算できるからだ。
「総合情報学部は数学や統計学を使うので、どうしても理系のイメージが強いです。しかし理系は理系科目だけ、文系は文系科目だけ学べばいい、という時代はどの学びの分野でも終わると考えています。本学部では、理系と文系の能力がどちらもなければ先に進めません。せっかくスキルを身につけても、それを外に伝えられなければ何の意味もありませんから。もし入学時に理系科目が苦手でも、文系の力でカバーすることは可能です。どちらも学ぶうちに、文理双方の力を身につけた人材になれます」
入学した学生たちの数学能力や、コンピュータスキルには個人差が見られる。しかし初歩から丁寧に教えられる体制を整えているため、現状ではそれほど苦戦はしていないそうだ。一方でプログラミングに関してはほぼ全員のスタートラインが同じであるため、学生たちは協力し合って授業に取り組んでいるという。
「学生の授業の理解度を見ながら傾向をつかみ、足りないところは都度補っていこうと考えています。焦らず、ある程度ゆっくりと構えて、4年間かけて必要な知識とスキルを教えていく予定です」
また、基礎科目が多い1年次だからこそ、ソフトスキルを高めるためのグループワークが効果的に働いている。授業内でコミュニケーションをとる機会は、和気あいあいとした雰囲気作りや、視野を広げるきっかけになった。
「今はデジタルの時代で、自分の好きなものだけ見ていればいい、という生活が当たり前になっています。すると視野を広げる機会が減ってしまう。だからこそ異なる意見にも触れる場が重要です。
グループワークでは世の中の物事についてどう思うかなど、さまざまなテーマで意見交換をしてもらっています。学生たちはそれぞれ意見を出し合うことでお互いの考えや人となりを知り、『そんな世界もあるのか』と気づきを得ているようです。多様な人がいる環境で過ごすことで、苦手を補い合い、互いの長所をかけ算にできるような人間関係を構築していければと思います」
変化に対応できる基礎力を磨く
社会は時代によって変化していくが、そのなかでも情報系の技術や知識はアップデートが早い。総合情報学部でも最新の状況を常に取り入れられるよう、教員が研鑽を積んだり、若手を積極的に採用したりと教育・研究を充実させる。しかしAIのように急速に発展する技術もあるため、今から新たなカリキュラムを考えても対応しきれないだろう。それでも常に次を見据えて情報収集をすることや、いつの時代でも通用する基礎力を磨くことが重要だと、山中学部長は語った。
「変化の激しさを前提にしたときにこそ、基礎の重要性が高まるでしょう。たとえばプログラミングのコードをAIに書いてもらったものの、それが思っていたようには動かなかったとします。どこが間違っていたのか、自分の指示の何が問題だったのかは、プログラミングがある程度できないとわかりません。AIが何でもやってくれる時代になるほど、基礎からスキルを身につけた人材が求められるようになるでしょう。だからこそ大学で基礎を学んでおけば、一歩も二歩も先を行ける人材になれるはずです」
今後は一期生の様子を見ながら、社会で活躍するための道筋を整えていく。総合情報学部は設置構想を始めた当時から、企業や地域から注目を集めていた。インターンシップなどの誘いも多い。「本当に学生のためになる内容なのか」「学生が期待通りの力を発揮できるか」などを念頭に置き、検討を進めるそうだ。
「本学で身につけられる文理の力や、広く客観的な視点で物事を考えるソフトスキルはどの分野でも求められています。4年後には引く手あまたの人材になれるよう、まずは一期生にしっかり教授する予定です。
本学で学んだスキルは、仕事の幅も広げると思っています。たとえば出産や育児などでしばらく会社を休まなければいけないときも、デジタルスキルを活かせば自宅でできる業務が増えますし、仕事に復帰しやすくなるかもしれません。卒業して5年、10年経ったときに、『総合情報学部で学んでおいてよかった』と思ってもらえればいいな、と考えています」
就職だけでなく、大学院に進学する選択肢もある。昭和女子大学大学院にはまだ情報系の研究科はないが、連携している他大学の大学院への進学は可能だ。
「もっと高いレベルで学びたいと思った学生には、進学も考えてほしいですね。進学者が数名でも出れば、本学部そのものが次につながると思います。進学できるくらいの力が身につく環境は用意しているので、ぜひ挑戦していただきたいです」

昭和女子大学 総合情報学部長
山中健太郎教授
