東京理科大学とプリンストン大学の研究グループは、アメリカでのオンライン調査から、自信過剰な人は自分の能力と所得が釣り合わない理由を経済の不公平さに求めるが、それが所得格差是正や政府介入への支持にはつながらないという結果を得た。
所得再分配政策の支持率は、経済不平等度が同程度に大きい国でもばらつきが大きいことが知られている。研究グループは、経済的利益を享受できる人々がなぜ所得再分配政策に反対するのかに着目して調査を行った。
アメリカでのオンライン調査には約4,500名が参加。回答者の大半が稼得能力に対する自己評価と収入の位置が一致していないとし、うち半数以上が自分の所得が稼得能力よりも低いと考えていた。さらに、この自信過剰という性質(「負の所得-能力ギャップ」と呼ばれる認識)が不平等是正の選好に与える影響を探った。
その結果、負の所得-能力ギャップを認識した人は、このギャップを自分の能力の低さではなく経済の不公正によると考えており、一方、それが所得格差是正への支持には必ずしもつながらないことが示された。この傾向は中道派・右派層でも同様だった。左派層では、負の所得-能力ギャップの認識が不平等是正への支持を高めるという示唆的なエビデンスが得られたが、左派層でも政府介入への支持は高まらなかった。
自信過剰は一般的な傾向で、他の国でも同様の結果が得られるとしているが、経済の公平性は国により見方が異なるため、今後は他の国でも検証の必要があるとしている。不平等の是正に賛成・反対する人物の特徴を明らかにすることは、不平等の拡大と分極化が進む現代社会での社会的対立の緩和に貢献するものと期待される。