東京大学の前田達彦大学院生(博士課程)らの研究グループは、絶滅危惧種を多く含むウナギ属魚類の胃内容物調査に関し、従来の解剖を伴う致死的手法とは異なる、チューブと鉗子を用いた非致死的な手法を確立した。野外で個体を傷つけずに繰り返し胃内容物を採取することが可能になる。
ウナギ属魚類は世界的に重要な水産資源だが、16種中6種が絶滅危惧種で、その保全は喫緊の課題だ。保全には食性調査が必要だが、多用される胃切開による内容物調査法は、個体を犠牲にする1回限りの観察で、最後に食べた餌に大きく結果が偏る。そのため、ウナギ属魚類など、幅広い生物を餌として利用する魚種では多数のサンプルが必要で、摂餌生態の把握に大きな障壁となっていた。
そこで研究グループは、奄美大島の河川に生息するオオウナギを対象に、チューブを用いて生きたまま胃内容物を採取できる手法を開発した。検証の結果、多くの個体から胃内容物をほぼ完全に採取でき、個体毎の採取効率(全胃内容物重量に対する採取した胃内容物量)は平均76.5%に及んだ。
この手法はウナギの体サイズや摂餌の状況を問わず様々な個体に適用できる。一方、エビやカニなど外骨格を持つ大型甲殻類を摂餌していた個体では、チューブでは胃内容物を全く採取できなかったが、鉗子を用いると全ての胃内容物が採取できた。
現在、この手法を用いて、これまで断片的にしか捉えられなかったウナギ属魚類の摂餌生態を、個体差や成長段階、季節変化を加味して長期間にわたり詳細に理解するための調査を実施している。今後、これまで見過ごされてきたウナギ属魚類の詳細な摂餌生態の解明やウナギの保全に大きく貢献できるようになるとしている。

