甲南大学と京都大学大学院の研究チームは、「進化の過程で蓄積された小分子RNA(sRNA)の自然変異が温度適応の多様性を決める神経回路を生み出す」ことを線虫の解析から明らかにした。
生物は生育環境から絶え間なく温度情報を受け取ることで適応し生存してきた。温度変化に対応する生体メカニズムを持っており、例えば、人間では自律的な体温調節機構が存在し、深部体温と環境温度の変化をそれぞれ感知して情報を統合し、適切な体温調節を行う。
研究チームはシンプルな実験動物である線虫「C.エレガンス」の温度順化を解析。その結果、世界各地で単離された線虫多型株が示す温度順化の違いを決定する原因遺伝子として、smrn-1遺伝子を同定した。
従来、smrn-1は線虫種だけが持つ機能未知のタンパク質の遺伝子と考えられていたが、解析から、smrn-1の遺伝子配列はヒトにも存在することを明らかにした。smrn-1は初期胚でsmall(小分子)RNAを最も多く蓄積し、酸素受容ニューロンの軸索発生を制御していた。この酸素受容ニューロンからの酸素情報が下流のADL温度受容ニューロンの温度応答性に影響を与えることで温度馴化多様性が生み出されることが分かった。
今回の研究から、進化の過程で蓄積された自然変異によってsRNAが多様化し、線虫の発生初期にsRNAがニューロンの形に影響を与えることによって、生息地の温度環境に適応した複雑な神経回路を形成することが分かった。今回見つかったsmrn-1の遺伝子配列は線虫には11箇所だが、ヒトゲノムには約1800箇所存在するため、ヒトの環境適応における脳・神経系の多様性の理解にもつながる可能性が期待されるとしている。
